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藤本隆宏『生産マネジメント入門〈2〉生産資源・技術管理編』後半戦、生産プロセスに必要なインプットとは?

第Ⅰ巻では、QCD+Fというフレームワークを中心に生産システムとしての製造業のアウトプット面について取り扱っていた。

さて、第Ⅱ巻『生産マネジメント入門〈2〉生産資源・技術管理編』では、そのインプット面として経営資源の管理や製品開発について取り扱う。

第Ⅱ巻は、第Ⅰ巻と比較してもより地味な内容かもしれない…

例えば、「製品開発」については、経営企画やマーケが扱うような話ではなく、メーカーの開発部門のような話だ。

いつものごとく、内容をまとめたので読もうかどうか考える際には参考にしてほしい。

生産マネジメント入門〈2〉生産資源・技術管理編 (マネジメント・テキスト)

生産マネジメント入門〈2〉生産資源・技術管理編 (マネジメント・テキスト)

 

 

1巻『生産マネジメント入門〈1〉生産システム編』についてはこちら。

www.take2biz.com

指標

  • テーマ:技術・生産管理/オペレーション
  • 文章量:普通
  • 内 容:普通
  • 行 間:普通
  • 推薦度:★★★☆☆

内容

第3部 経営資源の管理・改善

本書の前半は、経営資源について説明している。

第10章 人事・労務管理

経営資源の1つめとして、まずは人の話だ。

大きく分けて3つの話題、

  • 労使関係
  • 人材開発と雇用管理
  • 作業設計

について説明している。

前者2つは、一般的な組織論で語られるような話が多かった。

しかし、作業設計については、製造業に特有のことではないだろうか。少し言葉は悪いが、人も歯車の1つとしてうまく動くように配置し、指示を出し、メンテナンスをしていかなければならないのだ。

第11章 設備管理と生産技術

次は機械や工具など、設備についてだ。

基本的には前章の人事・労務管理と同じ流れだ。どんな設備をどのように手に入れ、どう管理していくのか。

しかし、人は採用後どんどん育っていくのに対し、設備は購入時点でできることが決まっている。

これは、人事・労務管理と比べて「どんな設備」に対する比重が大きいことを意味する。

そして、どんな設備を使うかという話は、工程をどこまで自動化するのかという話に繋がる。

本書では自動化(automation)を、

「人間の活動や作業を機械や装置で置き換えて、さらにそれを人間の操縦なしで動けるようにすること」

と定義している。

自動化の種類の代表例として、

  • Numerical Control
  • Flexible Manufacturing System
  • Computer Integrated Manufacturing

等を紹介している。

第12章 購買管理とサプライヤー・システム

最後に購買管理の話だ。

材料などを購入する際に、

  • 集中部署でやるのか分散させるのか
  • 内製するのか外製するのか(内外製区分の決定)
  • どちらが設計をするのか(承認図方式/貸与図方式)

等について説明している。

第4部 製品開発の管理と能力構築

後半は、製品開発についてだ。

第13章 製品開発の基礎:プロセス・組織・パフォーマンス

まずイントロダクションとして、プロセス、組織、パフォーマンスについて説明している。

例えば製品開発のプロセスには、

  • コンセプト作成
  • 製品基本計画
  • 製品エンジニアリング
  • 工程エンジニアリング

がある。製品を考えて終わりでなく、どうつくるか(工程エンジニアリング)まで入っているところが製造業らしい。

ここから3章を費やして開発パフォーマンスについての説明が始まる。

第14章 開発期間とその短縮

まず、開発期間についてだ。

前半は、クリティカルパスなど開発期間の捉え方を説明している。

後半は開発期間を短縮する方法として、

  • 個々の活動やタスクの期間短縮(圧縮・モード切替)
  • 複数のタスクの並行化(オーバーラップ・分割)
  • 繰り返し回数の削減(反復削減・フロントローディング)

について説明している。

第15章 開発コスト・開発生産性とその向上

次に開発コストについてだが、ここまでくると既存の話でカバーできてしまうらしい。本章は、わずか15ページで終わる。

第16章 総合商品力と開発の組織・プロセス

最後に、どんな組織でどう製品開発を行い、どう総合商品力に繋げていくかだ。

ただし、本書はマーケティングやイノベーションの本ではない。よって、シュンペーターの名やテクノロジー・プッシュ/マーケット・プルの話は出てくるが話は軽い。

どちらかといえば、組織的にどう製品開発を進めていくか、すなわち製品開発プロジェクトのマネジメントについてがメインだ。

例えば、重量級プロダクトマネージャー組織というものが出てくる。やはり、製品を創り出す以上、合議的よりも誰かしらのセンスを軸とした方がいいのだろうか。

第17章 研究開発戦略

少し話が変わり、研究開発(R&D)について説明している。

第17章 補論 ◎技術系の人事管理

(省略)

第18章 まとめ:戦略的もの造り経営を目指して

最後にトヨタを例にして簡単なまとめをしている。

結局、トヨタ(日本の製造業)の強みは、トップダウンの管理ではなくボトムアップの改善の積み重ねにあるという結論だ。

まとめ

こう言うのは気が引けるが、Ⅰ巻と比べるとおもしろくなかった。残念だ。

というのも、本書が対象とする製品開発とは、いかにうまく組織的な開発を進めていくかであって、顧客に寄り添って魅力的な製品を開発するという視点はない

もしかしたら、本書で一貫して取り扱ってきた自動車業界では、真新しい製品で他社を出し抜くというより、成熟した業界として効率よく持続的イノベーションを続けていくことが勝負の鍵なのかもしれない。

もちろん、それは理解できるが、ワクワクするようなものではなかった。

やはり、どうしてもマーケティングやイノベーションの方がおもしろそうである。

ただ、生産マネジメントの教科書としては優秀だ

トヨタに代表される日本の製造業、およびその強みを理解しておくという意味では読んでおいて損はないだろう。