M.E.ポーター『競争優位の戦略』これも読もう、2冊合わせてポーターの屈強な理論を完成させる
偉大なる経営学者マイケル・ポーターは、最年少でハーバード大学の教授になった後、1980年に『競争の戦略』を出版した。
『競争の戦略』では、5フォースというフレームワークをベースに業界における競争戦略がどうあるべきか、緻密な分析がなされた。
そして1985年、その姉妹書として出版したのが『競争優位の戦略』である。
- 作者: M.E.ポーター,土岐坤2019/04/16/070000
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1985/12/01
- メディア: 単行本
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『競争優位の戦略』では、企業の中身に注目し、企業自体がどうあるべきかというところに焦点を当てている。
さぁ、読んでみたくなっただろう。しかし、『競争の戦略』と同じ問題にぶち当たる。
とにもかくにも分厚過ぎる。
なんと、650ページあまりだ。『競争の戦略』は、500ページであった。さらに分厚くなっているではないか。
実際、本書に挑戦するのは、『競争の戦略』を読破した人が多いだろうから、そこまで心配はしていないが、それでもなお指針は必要だろうということで、『競争の戦略』と同様に『競争優位の戦略』の内容のまとめを共有することにする。
ぜひ、これを参考に『競争の戦略』にも負けない、ポーター節を味わってほしい。
なお、どちらから読んでも構わないと思うが、『競争の戦略』を読む場合はこちらを参考にしてほしい。
どちらから読んでも構わないと思うが、本書では本書と『競争の戦略』の関係性や『競争の戦略』の復習から入る。 具体的には、5フォースと3つの基本戦略のおさらいだ。 まず、価値連鎖というコンセプトを導入する。 そして、それをベースに基本戦略の説明が続く。 5フォース、3つの基本戦略など超有名フレームワークを生み出したポーターだが、もうひとつ価値連鎖(Value Chain)を生み出したのもポーターである。 価値連鎖とは、企業が価値を生み出していく過程を体系的に表したものだ。 例えば、製造業であれば製品の製造過程をイメージすればわかりやすいが、価値連鎖にはサービス業も、またバックオフィスのようなところも含まれてくる。 まず、3つの基本戦略のうちコストリーダーシップ戦略について分析する。 価値連鎖を用いると、コストがどう生まれ、どう振る舞い、どうコントロールすればよいかが見えてくるのだ。 次に、差別化戦略についての分析だ。 コストリーダーシップ戦略の分析と同様に、価値連鎖を用いることで何が差別化を生み、どう戦略に落とし込んでいけばよいかが見えてくる。 今では当たり前かもしれないが、価値連鎖を支えるのは企業が保有する技術だ。 よって企業は技術を戦略的に扱っていかなければならない。これを技術戦略と呼ぶ。 本章では、技術と競争優位の関係について迫る。 『競争の戦略』でいう買い手(供給業者)に対する戦略と同じで、自分に都合のいい競争相手はうまく取り込んでおけという話だ。 個人的には、確かにそうなんだけどジャイアン的思想であまりよく思わなかった。 ここで思い出したかのように「業界」ってなんだっけという話が始まる。 すなわち、これまで「業界」を頼りに話してきたが、はたして競争する領域、分析する範囲としてどう考えていけばよいのか。 個人的には、意義の大きいパートだと感じた。 実際、「業界」の範囲は、なにを根拠として決めればよいのか。 それは、マーケティングのSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)のようなプロセスを経て、戦略的観点から決まる。 ある業界、すなわち、ある商品が、別の業界(商品)に取って代わられてしまうことは珍しくない。 本章では、そのメカニズムを説明している。 部署だったり事業部だったり、その関係性についての分析が始まる。 事業それぞれの間には、3つの相互関係がある。 すなわち、 3つの相互関係をあげ、その重要性を説明している。 有形の相互関係とは、実際に有形のものや組織を共通化、共同化している場合。無形の相互関係とは、ノウハウの共有だ。そして、競争業者の相互関係とは多角化企業における相互関係だ。 相互関係がどのように価値連鎖へ影響を与えるかを説明している。 では、実際、相互関係を築こうと思ったとき、もちろんメリットだけではなくデメリットも生じる。 相互関係を阻む壁や、そもそもコストが掛かったりする。 それをどう乗り越えていくかが問題だ。 「レーザーブレード」というビジネスモデルを知っているだろうか? レーザーブレード、すなわちカミソリの本体を安く売り普及させることで、専用の刃の需要を生み、儲けるという算段だ。 そういったカミソリの本体に対する刃を補完製品と呼び、本章では補完製品をどう考えるかということを説明している。 いよいよ総集編だ。 業界の未来に対し、企業をどう守り、どう攻めていくのか… ここまでの内容を踏まえて、何をベースにどう戦略を立案していけばよいのか。 ありうる業界のシナリオを挙げ、それぞれのシナリオに対して戦略を練ればよいのだが、その緻密さとスマートさがさすがはポーターだ。 ずばり、どう防衛していくかという話だ。 理想としては、交渉なりなんなり水面下で戦いはすれど、そもそも攻撃されないようにしておくべきなのだ。 しかし、時には実際に攻撃されてしまい、反撃せざるを得ない場合もある。 続いて、どう攻撃していくかという話だ。 業界のリーダー、すなわち業界1位でない企業は、いつかはリーダー企業へ挑戦し、倒したいと思っている。 その際、気を付けるべきはなんなのかを説明している。 率直な感想としては、やはり『競争の戦略』よりも分量が多く、読むのが大変だった。 しかし、個人的には『競争の戦略』よりも本書の方がより勉強になった気がする。 というのも『競争の戦略』で扱う業界単位の話は、だいたいの人に取っては話が大きすぎて、それこそ戦略コンサルティングを生業としている人か学者にしかリアリティがないのではないだろうか。 一方で、本書が扱う企業価値の話は、まだパンピーにとって身近に思えた。 例えば、企業価値なんかも自分の会社の各部署を思い浮かべれば何となくでもイメージできるはずだ。 にもかかわらず、『競争の戦略』は読んでいても、本書まで読んでいる人が少ないのは残念なことだ。 ポーター自身も、この2冊を姉妹書と位置付けている。 確かに、2冊揃ってはじめて屈強なポーター理論が完成すると思う。 合わせて1000ページ、とても大変だが、読破した暁には新しい景色が見えると思う。 ぜひ、読んでほしい。指標
内容
序文
1章 競争戦略
パートⅠ 競争優位の原理
2章 価値連鎖と競争優位
3章 コスト優位のつくり方
4章 差別化の基本的考え方
5章 技術と競争優位
6章 競争相手の選び方
パートⅡ 業界内部の競争分野をどう決めるか
7章 業界細分化と競争優位
8章 代替に対する戦略
パートⅢ 企業戦略と競争優位
9章 事業単位間の相互関係
10章 水平戦略の効用
11章 相互関係の活用
12章 補完製品と競争優位
パートⅣ 攻撃と防衛の競争戦略
13章 業界シナリオと不確実性下の競争戦略
14章 防衛戦略
15章 業界リーダーへの攻撃戦略
まとめ